『孫子兵法』「計篇」:段落(1)

段落(1)の本文と書き下し文

本文

「計篇」

孫子曰,兵者國之大事。死生之地,存亡之道。不可不察也
○故經之以五事,校之以計,而索其情

書き下し文

「計篇」

孫子曰く、兵は国の大事なり。死生の地にして、存亡の道なり。察(さっ)せざるべからず。
ゆえにこれを経(おさ)むるに五事をもってし、これを校(くら)ぶるに計をもってして、その情を索(もと)む。

篇名について

篇名は「計篇」か?「始計篇」なのか?

篇名は、計篇とも始計篇ともいう。

この篇名について、もとは「計篇」という名で、後の時代に「始」の字が加えられたのではないかとする説がある。

「計篇」の概略

「計篇」は、戦争の準備段階についてを説く。

この篇名について、注釈書『魏武注孫子』「計は将を選び、敵を量り、地を度り、卒を料るなり。廟堂に計るなり」とある。

●計(はかる) …企てる。計画する。

●量(はかる) …推しはかる。推量する。

●度(はかる) …推しはかる。

●料(はかる) …推しはかる。

●廟堂 …先祖の霊をまつる場所。古代中国では、祭祀・政事ともに廟堂で行われたという。

段落(1)の詳細解説

孫子曰,兵者國之大事。死生之地,存亡之道。不可不察也。

【書き下し文】
孫子曰く、兵は国の大事なり。
死生の地にして、存亡の道なり。
察せざるべからず。

●兵 …戦争。軍事。

●不可不~(~ざるべからず) …ここでは 「~しなければならない」の意味

●察(さっす) …明らかにする。つまびらかに知る。よく調べ考える。

故經之以五事,校之以計,而索其情。

【書き下し文】
ゆえにこれを経むるに五事をもってし、これを校ぶるに計をもってして、その情を索む。

【現代語訳】
そこでこれ(軍事)を整えるのに五事をもって行い、これ(敵味方の五事)を比べるのに目算をもって行って、その実情を探る。

●経(おさむ) …おさめる。営む。管理する。

●「五事」 …道・天・地・将・法のこと。段落(2)は「五事」の説明。

●校(くらぶ) …比べる。比較する。

●計 …目算。みつもり。『国字解』に、「計とは、目算なり」とある。

●索(もとむ) …求める。探す。探し求める。

●情 …実情。

段落(1)の要旨・まとめ

「計篇」段落(1)は、「計篇」の冒頭であり、「戦争は国の大事であるため、よく考えなくてはならない」として、導入の役目を果たしている。